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私を抱いて…離さないで
第3章 パパ
「……近道していこうか」
脇道に逸れ、先輩が公園へと向かう。
ここを通れば、確かに駅までは近い。だけど、外灯が少ない分先輩と二人きりというのは、何だか心許ない。
その後を付いていきながら、ふと脳裏を過る。以前、バイト終わりに一人でここを通った時の記憶。
あの時、確か………
「──!」
スッと手が伸び、触れる指先。
それにビクッと反応すれば、私を見る先輩の瞳が柔らかく微笑む。
「大丈夫だから」
「………」
夜の公園の雰囲気に、私が怖がっているとでも思ったんだろう。
そっと繋がれた手の指が、やがて恋人繋ぎに変わり、安心させるようにキュッと握られる。
草木の生い茂る遊歩道。奥へと進んだその先に、例の藤棚が見えた。
遠くにある外灯の光に照らされているものの、その蔓や葉は殆ど影にしか見えず、風に揺れるその様は物々しい。
………確か、あそこで……
そう思考を巡らせた瞬間、そのトンネルから突然ヌッと人影が現れた。