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私を抱いて…離さないで
第3章 パパ


………疲れた。
確かに安藤先輩は、優しい。
だけど……傍にいても、違和感しか感じない。

中学生の頃──同じ学年に一人はいた、カースト下位や施設出身者にも分け隔て無く手を差し伸べる、キングのような人物。でも結局、その人が連むのは上位の人達とばかりで。優しさを売る理由が、周りに良く思われ自分の株を上げる為だと知ったのは……ずっと後の事だった。

落とすとか落とさないとか以前に、私の場合に限っては、そういう事なのかもしれない。
食堂で『俺の彼女』だと宣言した所で、目障りに感じる人はいても、それを鵜呑みにする人なんてきっといない──

カタン、カタタン。
電車の揺れに合わせ、吊革や中吊り広告が揺れる。
意思を持たず、流されるまま全てが同じ角度を保っている事に、滑稽さを感じた。



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