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私を抱いて…離さないで
第3章 パパ

「もう少し、肩の力を抜いて……」
「……」
「……そう。いい子だね。……もっと、僕の指に集中して……身を委ねてごらん」

そんな私を見抜いたのか。穏やかな声と共に、ゆっくりと柔らかな吐息を私の耳元に吹きかける。そこが数秒間熱くなり、次第にすうっと引いていく。

「果穂」

私の名を愛おしそうに呼んだ後、耳朶や耳殻に舌を這わせ、貪りながら柔く歯を立てる。

………どうして。
教え子と解っていながら──それも、美人でも可愛くもない、地味な私をこんな風に抱けるんだろう。
石原さんや大山さんのように、華やかで綺麗な人の方が、いいに決まってるのに。

「……果穂」

もう一度呼ばれて、視線を向ける。
間近で見下ろす菱沼は、こうして良く見ればとても整った顔をしていた。
切れ長の瞳。スッと通った鼻筋。僅かに薄めながらも形の良い唇。
その唇が、視線を絡めた後直ぐに迫り、私のと重ねられる。

………はぁ、……んっ、

咥内で熱く絡まる舌。
私で興奮してるのが、酷くおかしくて。
やっぱり変な人だと感じてしまう。
先生位のイケメンなら、こんな私に大金を払わなくても、欲求を満たしてくれる人がいる筈なのに。


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