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私を抱いて…離さないで
第3章 パパ
ゆっくりと身体を起こし、身形を整える先生の背中を縋るように見つめる。
「………いらない、です」
恐らく、二万円は口止め料。
いま受け取ったら、もうそれ以上はない。
一回で五万。しかも、嫌な事は一切しない。……扱い方だって、優しい。
合意の上とはいえ、未成年の教え子に手を出したという弱味もある。
「だから……」
じん、と痺れる指先。
……そうは思っても、やっぱり怖い。
弱味なら、私にだってあるから。
ドクン、ドクン、ドクン、……
緊張から張り裂けそうになる胸を抑え、思い切って口を開く。
「また、私を買って下さい」
声が、震える。
こんな台詞を言う日が来るなんて、思いもしなかった。
振り返った先生が、僅かに見開いた目を私に向ける。目と目が合えば、優しい溜め息をついた先生がシニカルな笑顔を浮かべる。
「案外君は、強かなんだな」
「……」
ポケットから財布を抜き取り、紙幣を五枚取り出す。
「いいよ、君がそれで良いなら。……私は構わない」