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私を抱いて…離さないで
第3章 パパ

久し振りに足を踏み入れた、夜の繁華街。相変わらず空気は澱み、見上げる夜空に星は見えない。
まるで昼のように明るい街並。煌々と輝く電飾が賑わいを見せ、次第に妖しい活気に溢れる。
こんな場所に、一体何の魅力があるというんだろう。一体何を求めて、人々は集まってくるんだろう。
点滅する信号。スクランブル交差点を、足早に渡る。何の危機感もなく、真っ直ぐ此方に向かって来る人々。その隙間を止まらずに駆け抜ける。以前より、人の間を縫って歩くのが上手くなった気がする。
プップー!
人の多さに気圧され、肩身の狭い車がそれでもクラクションを鳴らし、歩行者に威嚇をする。
「……」
駆ける足が速くなる。足取りも、何だか軽い。
何もかも、上手くいきそうな気がする──向こう岸に辿り着くまでの間、そんな淡い期待を胸に抱く。
何処か浮いたような、地味めの服。ノーブランドのバック。だけど、その中には現金30万円。
見た目は全然。だけど、もう細客じゃない。
このお金を使えば、今日からは……
煌びやかな看板、ホストクラブ名の『雅-Miyabi-』を掲げるビルのエレベーターに飛び乗ると、逸る気持ちを抑え、ドアが開くのを待った。

