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私を抱いて…離さないで
第3章 パパ
いつもは躊躇しがちな、重厚感のあるホストクラブのドア。そのノブに手を掛け、開けようとしたその時──

チン
背面にあるエレベーターの音がし、ドアが開く。

カツ、カツ、カツ……
廊下に響く、ヒールの高い音。
『細客』──いつかのキャバ嬢を連想させ、一気に緊張が走る。

「……」

これまでの軽やかな気持ちは萎み、今はもう、自信を失った只の地味子。でも……
バックを持つ手に力を込める。

大丈夫。今日の私は、細客じゃない──


「……あれぇ、川口さん……?」

トンッ、と肩を叩かれ、驚いて振り返る。
と、視界に映ったのは──シックながら華やかさを兼ね揃えた、黒のドレスワンピース。少し濃いめのピンクルージュ。ルーズ感のある、ふわっとアップした髪。

「えぇー、凄い偶然! っていうかぁ、あれから本当に通ってたんだぁ」

鼻に掛かる高い声を上げたのは──同じ大学の、大山美紀子。

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