この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
私を抱いて…離さないで
第3章 パパ

コンコン……
テーブルをノックする音がして、顔を上げる。
「……ンじゃー、果穂ちゃん。まったねぇ!」
「……」
屈託のない明るい笑顔を向け、手を振る凛々子。それに、どう応対したらいいのか解らない。
あらゆる壁を取っ払われ、スッと懐に入ってくるこの感覚──彼女を纏う強いオーラに圧倒されつつも、その人懐っこい雰囲気に、つい……気を許してしまいそうになる。
心の柔らかい所まで、全て曝け出したら……いけないのに。
「……」
不安で、胸が苦しい。
視線を下げて俯く。
施設に入ったばかりの頃、当時カーストトップだった女子高生達は、同室になった私を敵視し、攻撃してきた。
心を開こうとしていた私に。
大丈夫……
もし、陥れる為だったとしても……平気。
あの頃の、何も出来ない小さな子供じゃない。
……私はもう、大学生なんだから。
俯いたまま更に肩を丸め、左手で胸元のシャツをキュッと掴む。
高いヒールを鳴らしながら、凛々子が石原と肩を並べて食堂から出て行く。
その音が聞こえなくなっても、中々顔を上げる事が出来なかった。

