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私を抱いて…離さないで
第3章 パパ
夜の繁華街。
昼間とは違う様相を見せる街の景色を、部屋の窓ガラス越しに見下ろしながら、先生の体温と確かな存在を背中に感じる。
久し振りの逢瀬。背後から回された先生の手が、私の顎先を意地悪く持ち上げると、曝された首筋から項に、熱い吐息が掛かる。

「……ベッドに、おいで」
「……」

柔く耳朶を食まれ、湿り気のある熱にぴくんと反応してしまう。
私の心の傷を知っているからなのか。……不思議と、安心する。
こんな事思うのは変かもしれないけど。私自身が幼い子供に還り、あの当時思い描いていた理想の父親に、色んな悪意から護るように抱き締められ、ずっと欲しかった無償の愛を注がれているみたい。

「……先生」

きっと、大丈夫。
少し怖いけど……先生にされるなら、多分平気。

「触って、下さい……」

私の顎に掛かる先生の手の甲に触れ、そっと辿るように下へ移動し、手首をキュッと掴む。
そして、導くようにして……私の胸元へ。


ドクン……ドクン……


大きな手のひらが、布越しに柔らかな膨らみを包む。
伝わるのは、その感触と僅かに湿った熱。

「………私でいいのか? 適任者なら、他に居るだろう?」
「先生が、いいんです……」

夜の景色を映す硝子越しに先生を見れば、顔を上げた先生が、少しだけ驚いた表情をしているように見えた。



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