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私を抱いて…離さないで
第3章 パパ
クチュ……、ぴちゃ……、

「……」

なんか……ヘン。
性的な快楽とか、トラウマの恐怖とか……そういうのとは違う。
胸の奥に渦巻く混沌とした感情が溢れ、私の胸をゆっくりと、重く静かに押し潰してくる感じ。

……知ってる。この感覚。
施設の先輩にいたずらされる度に、胸の奥に固く押し込めた感情と、施設の職員に知れ渡った時に、底を這うように広がった罪悪感。羞恥。

胸の奥が、ザラザラする。
自ら望んでお願いしたのに……この行為が、してはいけないものだと私を責め立てる。


……苦しい。
息が、できない……


「……果穂」

その異変に気付いた先生が、胸の頂から唇を離し、私の顔を見つめる。
伸ばされた手。ビクン、と小さく跳ねる身体。
一瞬だけ止まった先生の手が、私を安心させるかのように片頬を包む。

「無理……しなくていい」

小さな溜め息。
瞬きもせず先生を見つめていれば、目頭から目尻まで、下瞼をそっと親指の腹で撫でる。

濡れ広がる感触。その時初めて、声を出さずに泣いていた事に気付く。


「やはり、こういうデリケートな問題は……安藤の方が適任だ」


スッ……

先生が、離れていく。


「……」


それまであった温もりや安心感までをも連れて。



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