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私を抱いて…離さないで
第3章 パパ
トン……
「綺麗事を言って申し訳ないが。
私との経験は……果穂が幸せになる為の、踏み台だと思って欲しい」
グラスを置き、目を伏せた先生が、少しだけ苦しそうに声を出す。
ビールの白い泡が、ゆっくりとガラスの内側を滑り落ちながら、小さく弾けて消えていく。
「……」
……解ってる。
解ってるよ、先生。
最初から、不毛な関係だったって事くらい。
深く踏み込んではいけなかったんだって……
でも、私は……先生と違って、合理的にこの気持ちを処理できそうにない。
理屈で離れられる位なら……それはきっと、本当の恋じゃないよ。
先生……
「果穂」
俯いた私に、先生が私の名を呼ぶ。
いつもとは違う。少しだけ、弱々しい声。
視線を持ち上げれば、寂しそうに潤んだ先生の双眸が、真っ直ぐ私に向けられていた。
「………今まで、ありがとう」