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私を抱いて…離さないで
第3章 パパ
──いつも、そう。
私が心を開いたり、傍にいて欲しいと願う人は……いつも遠くへ離れてく。
だから、慣れてる。
大丈夫だよ、先生……
「……」
そう心の中で強がってはみたものの、虚しさだけが渦巻いてく。
本当の気持ちに蓋をした所で、心の奥にある抉られた穴までは、……塞げない。
元に戻るだけ。ただ、それだけなのに。
先生と過ごした時間の分だけ、胸が痛い。
──多分。あの時の感覚に、似てる。
マタニティドレス姿で、児童養護施設の面会に来た母が、別れ際、私に手を振った後、嬉しそうな笑顔で大きなお腹を擦りながら、何か話し掛けていた姿を見た──あの時。
本当は、私があの愛情を独り占めする筈だったのに。
そう思ったら……悔しいとか、悲しいとか、そんな単純な感情なんかじゃなくて。根底から覆されたような現実が襲い、もうどうしようもない……どうする事もできない虚無感に襲われた。
「……」
私は、居ても居なくても同じ。
天秤にかけたら、切り捨てられる方の人間。
誰かに必要とされない。
誰も……私を必要とはしない。