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私を抱いて…離さないで
第1章 初恋の人

「……」

カツカツカツ……
コッコッ……
バタバタバタ……
タッタッタッタッ……

立ち止まった私を避け、人々の波が通り過ぎる。まるで川の真ん中にある、大きな石のよう。流れを邪魔するだけで、私は……上手く馴染めない。
こんなに人が溢れ返っているのに……ひとりぼっちの様な錯覚に陥る。

……ダメだ……
何度も何度も周りを見渡すけれど、人の顔が手ぶれした動画を見ているようで、認識できない。
速い──。圧倒される。押し潰される……
私の周りだけが真っ黒で、影の世界に迷い込んだような、おかしな気分。
苦しい──誰か助けて……
胸を押さえ、背中を丸めた。

──幼い頃からずっと、感じていた。
周りに決して、少しも溶け込めない、私──

遠くで点滅する、歩行者用の青信号。
人がまばらになり、やっとの事で浅い呼吸がひとつできた───時だった。


プップーッ!

「……にやってんだっ!」

強く掴まれた左手首。それがグンッと引っ張られる。

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