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私を抱いて…離さないで
第3章 パパ


「……ごめんね、引き止めちゃって」
「いえ……」

頼りない外灯の下、並んでベンチに座る。こんな薄暗い中、酔った男性と一緒にいるのは、とても危険な気がする。
けど、抑止力というか。それを緩和させてくれる、強い味方がいる。
抱っこされたままの赤ちゃんは、スヤスヤとよく眠っていた。

「……覚えてる? いい歳したオッサンが、若い娘を連れてたの。……あれ、どうなんだろうね……」
「……」
「俺ね、軽蔑しながらも……ちょっとね。羨ましく思ったんだよ。
金で女子高生をどうにかするなんて、犯罪だけどさ……」

相当、酔ってるんだろうか。
店員と客だった事が一度あっただけで、赤の他人である私に、内容の濃い話をつらつらと話し出す。

「……って、ごめんね。いきなりこんな変な話して」
「……」

申し訳なさそうに苦笑いした後、缶ビールをクイと飲む。

「何ていうか。……似てるんだよね、君。妻にさ」
「……」
「妻は、真面目で可愛い子だったんだよ。……結婚して暫くしたら、お互い子供が欲しいねって話になって、作ろうとした。……でも、中々出来なくて」
「焦る妻に、無理しなくていいって言ったんだ。……そしたら、打ち明けられたんだよ。
……昔、援交して……五回堕胎した事があるって……」

え……
ゾクッと背中に悪寒が走る。
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