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私を抱いて…離さないで
第3章 パパ
* * *
アパート前で突然震え出した、携帯。
スカートのポケットから取り出して見れば、そこに表示されていたのは──『祐輔くん』の文字。
『夜遅くに、ごめんね』
携帯越しに聞こえる、少しだけ鼻に掛かった声。明るいながらふわりと優しくて。私の鼓膜を、心地良く震わせる。
「……ううん」
不思議。それまで、心の中でドロドロと渦巻いてた色んな感情が、祐輔くんの声で浄化されていく。
携帯を右から左へと持ち替え、玄関の鍵をカチャリと開けた。
『電話、……しない方がいいかなって思ってたけど。やっぱり気になっちゃって』
「……」
『美紀子ちゃんとは、あれからどう? 気まずくなってない?』
カチ、
玄関の電気を点け、靴を脱ぎ、音のない部屋へと入る。
やりっ放しのレポート用紙。それらが、小さなテーブルを占領していた。
ズキン……
連想ゲームのように思い出される、菱沼先生。
「………うん」
テーブル前に座り持っていたカバンを脇に置くと、肩と耳で携帯を挟み、散らばっていたその用紙を掻き集めてひとつに纏める。
アパート前で突然震え出した、携帯。
スカートのポケットから取り出して見れば、そこに表示されていたのは──『祐輔くん』の文字。
『夜遅くに、ごめんね』
携帯越しに聞こえる、少しだけ鼻に掛かった声。明るいながらふわりと優しくて。私の鼓膜を、心地良く震わせる。
「……ううん」
不思議。それまで、心の中でドロドロと渦巻いてた色んな感情が、祐輔くんの声で浄化されていく。
携帯を右から左へと持ち替え、玄関の鍵をカチャリと開けた。
『電話、……しない方がいいかなって思ってたけど。やっぱり気になっちゃって』
「……」
『美紀子ちゃんとは、あれからどう? 気まずくなってない?』
カチ、
玄関の電気を点け、靴を脱ぎ、音のない部屋へと入る。
やりっ放しのレポート用紙。それらが、小さなテーブルを占領していた。
ズキン……
連想ゲームのように思い出される、菱沼先生。
「………うん」
テーブル前に座り持っていたカバンを脇に置くと、肩と耳で携帯を挟み、散らばっていたその用紙を掻き集めてひとつに纏める。