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私を抱いて…離さないで
第3章 パパ

あれからだいぶ経つのに。ずっと気に掛けてくれてたのかな。
……まさか、ね。
これも、只の営業トーク。
そう思い直すものの、こんな細客の私にまで営業をかけて、何の得があるんだろう。

『そっか。なら良かった』
「……」
『……』

途切れてしまう会話。
だけど、嫌じゃない。
電話越しから感じる、祐輔くんの空気感が柔らかくて……心地良い。

「……」

纏めたものを端に伏せて置くと、携帯を左手に持ち直す。

『ねぇ、果穂ちゃん。……少しだけ、目瞑ってみて』
「……え……」
『お願い』

祐輔くんの甘い声に導かれ、そっと目を閉じる。

『……感じる? お店の雰囲気』

ガヤガヤガヤ……
電話の向こうから聞こえる、お店のBGMや活気あるコール。
視覚が遮られたせいで、聴覚が敏感になっているんだろう。臨場感に溢れ……まるで、雅の中にいるみたい。
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