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私を抱いて…離さないで
第3章 パパ
ぼそりと心情を吐くと、それまで漂っていた雰囲気が変わる。
微睡みから醒めたような、少し現実味を帯びたピリッとする空気。
「……」
どうしていいか解らず、祐輔くんからの返事を待つ。
さっきまでとは違う。この沈黙が、不安を余計に煽る。
『──解った』
「……」
『それで果穂ちゃんの気持ちが、楽になるなら』
「……」
何だろう。
祐輔くんの声が……少しだけ遠い。
ざわざわする。胸の奥で、増殖した不安だけが渦巻いていく。
『オイ美麗! んな所でサボってんな!』
突然──電話の奥から聞こえる男の怒声。
咄嗟に携帯を隠したんだろう。店内の賑やかな音がくぐもり、布連れの音が大きく聞こえた。