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私を抱いて…離さないで
第1章 初恋の人

好き……とかじゃない。
安藤先輩は、確かに格好いいイケメンだし、女子人気も高い。遊び人という噂を聞いた事もあるけれど……そんな事、私にはどうでもいい。
「……もしかして、ここ初めてとか?」
「え……」
「スクランブル交差点。
何となく、人の多さと流れに圧倒された……って感じに見えたから」
「……」
人の波から取り残された姿を端から見て、きっと滑稽だったに違いない。
妙に高鳴る心臓を抑え、目を伏せた。
「──何やってんだよ、将生!」
少し離れた所から、安藤先輩を呼ぶ男声が聞こえた。
その声につられて見れば、人混みの向こうから、先輩の友人らしき男性が二人、此方を見ている。
「先行ってるぞ!」
「……おぅ!」
声を上げてのキャッチボールの後、先輩が私に向き直る。
「これから、さっきの奴らと飲み会なんだけど。……果穂ちゃんは……?」
「……え」
──ドクンッ
じっと見下ろされる、綺麗な双眸。
会話の流れで聞いた……というより、普通に心配されてるような……
「……あ……、えっと……」
突然聞かれ、咄嗟に返せない。

