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私を抱いて…離さないで
第1章 初恋の人


「……あ、あの」

恐る恐る、口を開く。
ドクン、ドクン……
心臓の音が、中々静まってくれない。
そんな私を知ってか知らずか。美麗が屈託のない笑顔を返してくれる。

「ん、なに?」
「………えっと……この前、施設にいたって話……してくれたよね」
「うん」

美麗が向ける、真っ直ぐな瞳。
くっきりとした綺麗な二重瞼。綺麗なその瞳に、吸い込まれてしまいそう。


「……もし、」

ああ、もう。……緊張で、指が震える。
何だか声まで、震えてる気がする……

「もし、同じ施設出身の子が……お客さんとして来たら………美麗くんは、嬉しい?」

″私、同じ施設だった、川口果穂です。
憶えてますか……?″

……たった、それだけ。
なのに、どうしてスッと口から出てきてくれないんだろう。
探るような事しか言えない自分に嫌気が差しながらも、そのキラキラした瞳から目が離せない。

綺麗な弧を描いた美麗の唇が、動く。


「……多分、それはないよ」

「え……」


小さく、声が漏れる。

それにハッとした美麗が、僅かに見開いた瞳を揺らす。

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