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私を抱いて…離さないで
第1章 初恋の人

「……入ってた施設、全然遠い所だから。遭遇率は低いかも。
……それに俺、施設に入ってたの小学生までだし。もし偶然会ったとしても、お互い解んないと思う」
「……」
そっか……
……そうだよね。
あそこからここまで、気軽に来れるような距離じゃないし。
現に再会しても、祐輔くんは私の事を憶えてなかったみたいだし……
「……ていうより」
少しだけ背中を丸めた私に、美麗が続ける。
私を見ながら、私ではない何処か遠くを見つめて。
「俺さ、逃げてきたんだよ。地元から。
誰も俺の事を知らない場所で、イチからやり直したくて。
……だから、同郷の人とは……会いたくない、かな」
「……」
会いたくない──
その言葉にショックを受けながらも。
私と同じ心境で、故郷を捨てたのかもしれない事が……無性に嬉しかった。
「……今日はありがと」
店を出て直ぐのエレベーター前まで、美麗が見送ってくれる。
「送りまで指名してくれて」
「……ううん」
エレベーターの下りボタンを押した美麗が、私に向き合う。

