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私を抱いて…離さないで
第1章 初恋の人

「ごめんね。俺ばっかり話しちゃって。……俺さ、こう見えても人見知りで、ヘルプ中も聞き役ばっかりなんだけどさ。
果穂ちゃんの前だと、……不思議と話せるっていうか……」
──ドクンッ
それって……私、だけ……?
″特別″って事……?
「……嬉しい」
「え……、ホントに?」
答える代わりに、口端を少しだけ持ち上げて、笑って見せる。
そんな私に目を見開いた美麗が、直ぐに目を細めた。
太陽のような、温かい微笑み。
「……良かった。今日は笑ってくれて」
「──!」
その笑顔が素敵で……見惚れてしまう。
……好き。
祐輔くんが、好き。
チン、…
無情にも、エレベーターが到着してしまう。
開かれたドア。閉まらないよう片手で押さえ、もう片方の手を私に差し伸べる。
「……っ、」
触れ合う手。指先。
温かな、温もり。
緊張とトキメキが同時に襲い、ふわふわとした気分──
もっと、繋いでいたい。
もっと……傍に……
「それじゃあ、気をつけてね」
「……あ、」
小さな箱に入った私に、祐輔くんが笑顔で手を振る。
その瞬間、ドアが閉まってしまう。
「……」
しん、と静まり返る空間。
解ける……魔法。
……でも、この温もりだけは、まだ消えない。
さっきまで繋いでいた手のひらを広げ、そっと見下ろした。

