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私を抱いて…離さないで
第1章 初恋の人


バッグを肩に掛け、館内を出る。
次の講義は出たかったけど、欠席しても今の所単位の方は大丈夫。

「……あ、川口さぁん!」

相変わらず清楚な身形をした大山が、私に笑顔で手を振ってくる。
時間潰しに、友達とカフェテラスでお茶でもしていたんだろうか。

「次の講義、出るんだよねぇ?」
「………あ、えっと」

相変わらずの、猫なで声。
少しだけ上目遣いをし、大山が両手を顔の前で合わせる。

「良かったぁ……! じゃあ、代返お願いねぇ!」

私の言葉を遮り、甘えた声で強引に押し切る。拒否権など寸分も与えずに。
そしてひらひらと手を振り、サッサと立ち去っていく。媚びた笑顔を残して。
大山の姿を目で追っていけば、そこには彼女を待つ同じサークルの男女が数人。キラキラと輝く、カースト上位の人達ばかり。

「……」

その中に、一際イケメンオーラを放つ安藤先輩の姿が。
他メンバーと談笑していた彼が、こちらに顔を向ける。駆け寄った大山さんに気付いたんだろう。けど、その瞳は大山さんを通り越して、真っ直ぐ私へと向けられた。

「……!」

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