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私を抱いて…離さないで
第1章 初恋の人

目と目が、合う。
瞬間──スクランブル交差点で助けられた記憶が蘇った。
頭をぽんぽんとされた時の、あの感触や擽ったさまで……

先輩が、胸元辺りの高さで手を振る。その手を両手で包んで引き寄せ、上目遣いの大山が笑顔で話し掛けていた。


ああ……
何となく、解った。
……多分、わざと私を外したんだ。

貴女はこっち側に来ないでね。──まるで、見えない境界線を張られたみたいに。


別に、どうだっていい。
私には関係ない。

……そう言い聞かせて、心が抉られそうになるのを拒む。
立ち位置なら解ってる。あの集団の中に、私の居場所がない事くらい。
……都合のいい時だけ声を掛けられる事くらい。

くるりと背を向け、講堂へと向かう。
……馬鹿みたい。言う事なんて聞かなければいいのに。
そう思うものの、染み付いた性なのか、逆らえなくて。
軽く溜め息をつき、バックからスマホを取り出す。

〈ごめんなさい。行けなくなってしまいました〉

そう打ち込み、送信した。


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