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私を抱いて…離さないで
第1章 初恋の人


……パシャ。

殆どの生徒が、スマホを掲げて黒板の写真を撮る。
中には、最初から最後まで動画を撮りつつ、机に突っ伏して寝ている生徒もいた。

この先生はとにかく早口で、黒板に書いた文字を直ぐに消してしまうので有名だったりする。ノートに書き写す暇など、恐らく無いに等しい。
スマホで写真を撮りながら講義を聴く方が、賢明というもの。


「……今日はここまで」

チャイムと共に、先生がサッサと授業を終わらせる。
人気講師なら、質問やら何やらで生徒から引き止められるのだろう。しかし特にそういう事もなく、先生は静かに教材や資料を纏めていた。

もともとまばらだった生徒が、荷物を纏めてバラバラと席を立つ。
そんな中私は、先生の話を忘れないうちに、走り書きしたメモと写真画像を睨めっこしながら、ノートを纏めていた。

「……」



施設にいた頃、私は目立たない存在だった──

目立たない、というより、目立たないようにしていた……というのが正しいのかもしれない。
環境さえ整えば、直ぐに家に帰れる私は、そうではない人達から一線を引かれていたから。

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