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私を抱いて…離さないで
第1章 初恋の人
* * *


「……大人しい顔して、随分と大胆な子なんだね」

バスローブ姿の私を、腰にタオルを巻いた裸の男が、背後から抱きしめる。
全身を映す鏡越しで見つめられた後、熱い吐息が厭らしく耳裏に掛かった。



数時間前──
アプリのメッセを確認すれば、久しぶりに援交のお誘いが入っていた。
ホテル代別で一万五千円。妥当な金額。
最近では、登録したての頃のような沢山の数のメッセはない。顔もだけど……多分、真新しさが無くなったせいなのかも。

メッセを一往復し、契約成立。
指定された近くの店で落ち合って、軽く食事をした後ホテルへ。

今回の相手は、処女専のおじさんとは違い、身形もしっかりとしていてそれなりに強いオーラを感じる。
左手の薬指には、マリッジリング。──後腐れなく、お金で手軽に処理したかったのだろう。
だったら風俗を利用すればいいのに……と思ったけど、その道に慣れたプロを相手にしたくないのかもしれない。例え性嗜好が『素人』だったとしても、こんな地味で平凡な私を選ぶのだから、相当だと思う。
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