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私を抱いて…離さないで
第1章 初恋の人
「……この、マグロ女が!」
やる事をやり終え、身形を整えた男が捨て台詞を吐くと、ベッドに横たわったまま踞る私に、紙幣を投げつけた。
ひらひらと舞ったそれは、私を傷付ける事無くベッドの上にはらりと落ちる。
一万五千円──
契約通りの金額。だけど、違反したのだから、少しぐらい上乗せしてくれたっていいのに……
皺の入ったそれを、片手でそっと拾い上げる。
──軽い。枯葉のように、全く重みなんて感じない。
処女を売った時よりも、価値が下がった様な気さえする。
「……」
別に……どうって事ない。
所詮、合意の上でのやり取りに過ぎない。
……ただ、今回の事で、援交が危険と隣り合わせだって事は、身をもって知った。
そして私には、性に合わない事も。
──もう、止めよう。
もし私にトラウマが無く、貞操観念の低い類の人間だったなら……もっと気楽に、合理的に、稼げていけたのかもしれない……
身体を起こせば、男の精液がとろり…と足の間を伝う。……気持ち悪い。
心が容赦なく抉られ、虚しさだけが残る。
触られた所全てが、ベタベタして気持ち悪い。全部が、気持ち悪い。
……吐き気さえずる。
首元にこびり付いた、男の唾液。無意識に触れれば、そこに付けられた鬱血痕の存在を思い出した。