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私を抱いて…離さないで
第1章 初恋の人
「二万五千円なら、どう……?」
「……え」
「不満なら、もう少し出すけど」
親しみ易い、柔やかな表情。
だけど、その目の奥が……何となく怖い。
「……どうする?」
「………」
男が、言葉巧みに畳み掛けてくる。
私に選択権を与えてはいるが、拒否という選択肢は最初から与えていない。
もしかしたら、既に私の身辺調査をしていて、実際に拒否権など無いのかもしれない……
「じゃあ、そういう事で。……行こうか」
黙っていれば、勝手に話を進められる。
まるで知人に偶然会って、いいから遊びに行こうよと、多少強引に誘うみたいなノリ。
男が先頭切って歩き出す。私が後から付いてくると、解っているかのように。
「……」
こんなの、断ればいい。
強く断ったって、大丈夫……なのに。
あの目は──怖い。
怖い。怖い。怖い。怖い。怖い……