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私を抱いて…離さないで
第1章 初恋の人
* * *


ホテルを出て、暫く歩く。
線路沿い。高架下。
女性が一人で歩くには危険な、暗くて寂れた細い道。
だけど、今は、今だけは……人が溢れる場所に身を置きたくなかった。

壊れた人型玩具が、服を着て歩いている。……そんな馬鹿な事を、ぼんやりと考える。
壊された心の欠片に映ったのは、明るい笑顔を浮かべる、祐輔くん……


「……」

どうしよう……
お金、無くなっちゃった……

頬に、熱い涙が一筋伝う。
だけどそれを拭わず、泣き顔を闇に曝す。

祐輔くんの誕生日、お祝いしたかった……
アルコール注文して、少しでも売り上げに貢献したかった……


……祐輔くん……
会いたい……


祐輔くんの優しい笑顔、髪に触れる手、絡めた小指、差し出されたハンカチ、祐輔くんの……匂い。
走馬灯の様に、色んな祐輔くんの記憶が次々と思い出される。


……会いたいよ……祐輔くん……



──ぽつ、
…ぽつ、ぽつ……

声を殺して泣いてたからだろうか。
私の心情を知ってか知らずか、大きな雨粒が落ちてくる。

やがてそれは大粒の雨となり、私の髪を、服を、心を……冷たく濡らす。

涙を隠すには丁度いい。
けど、余計に虚しさだけが募った。
雨と涙の入り混じった雫が、顎先から滴り落ちる。

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