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私を抱いて…離さないで
第1章 初恋の人
会えなくてもいい。
──せめて、祐輔くんの近くに行きたい。
線路沿いを只管歩き、繁華街へと向かう。
途中、傘を差す男女とのすれ違い様、好奇な目を向けられた。
「……」
凄く、大切にしていたもの。
両親と、幼い私の三人で写った……家族写真。
施設でどんな仕打ちを受けたとしても、その写真をこっそり盗み見れば、その瞬間だけは救われた。
──それは、小四の時。
夕食の後、多目的室の物陰で、いつものように胸ポケットに仕舞ってあった写真を取り出す。
少し困惑した表情の母。柔やかな表情の父。
その真ん中にいる、二歳の私。
直ぐにまた、両親と暮らせる。それまでの辛抱。……写真をじっと見つめながら、そう、自分に言い聞かせていた……時だった。
『……へぇ』
背後に立った影が、上からサッと写真を取り上げる。振り返ってみれば、同室のリーダー格である女子高生だった。
『こんなの持ってんだ。……なに、あたしらへの当て付け……?』
取り巻き連中に囲まれる中、目の前でそれがビリビリと破られる。
『両親揃ってるからって、いい気になってんじゃねーよ!』
細かく千切られたそれが、ヒラヒラと雪のように舞い散る。
……動け、なかった。ただそれを、黙って見ているしかなかった……
全て床に落ちたそれを、トドメとばかりに踏み躙られる。