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私を抱いて…離さないで
第1章 初恋の人
私とは違う。生まれも育ちも。
顔も。性格も。
世渡りの上手さも。
「大丈夫だよ。ジャージで来るっていう人もいるみたいだし。……あ、料金もね、初回なら大して高くないよ。寧ろ安い……かな」
金銭感覚だって違う。
例えそれが一万円だったとしても、私には決して安いとは思えない。
「それに、……男の子といっぱい喋れるよ!」
「……」
「合コンとは違って、楽しいよぉ。
みんな優しくて、会話もリードしてくれるから大丈夫。……だから、ね?」
「………でも」
渋る私の正面に回ると、両手を摑み、真剣な目を向けてきた。
「何事も経験……でしょ?」
「……」
──経験。
もし、貴女と同じ経験をすれば、私も少しは貴女のように変われるだろうか。
少しは、普通になれるんだろうか──
「……うん」
「じゃあ、行こっ!」
パアァ、と花が咲いたような笑顔を見せ、その手を引っ張る。
どうして彼女が地味な私を誘うのか。
本当の理由はよく解らなかったけれど……
多分一生行く事はないと思っていたホストクラブに、私は初めて入店した。