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私を抱いて…離さないで
第2章 人と金と…
確かに、先輩は──イケメンだ。
女の子が先輩を好きになるのも、解る。
だって、こんな私にまで……こうして気に掛けて、優しく接してくれるのだから。
「──あの」
それなら、いいよね。
こんな不躾なお願いしてみても、いいよね……
「あの、私……お金……盗まれちゃって。
……それで、帰る電車賃も無くて……」
「……」
「……もし、ご迷惑で無かったら……少しでいいので……お金、借りてもいいですか……?」
言い終わってから、気付く。さっきのお礼を先に言ってなかった事に。
それに……よくよく考えてみれば、同じサークルに所属してる先輩というだけで、殆ど話した事なんてない。なのに、いきなりこれは……と、後悔して視線を伏せる。
案の定、先輩からの返事はない。
目線を上げる勇気はなく、自分の身体を抱いたまま、俯いた。
身体が、震える。
なのに……熱くて……
息苦しくて……頭が痛くて……ふらふらして……
……もう、立ってられない……
地面がぐにゃりと歪み、平行感覚を失う。
視界の端からチラチラと細かな黒い点が散りばめられ、次第に真っ黒に浸蝕されていく。
脳内が大きく揺れ、手足の感覚が無くなり……身体がふわりと軽くなって──
「………果穂ちゃん……!」
その声を最後に、私の意識は暗闇へと堕ちていった。