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私を抱いて…離さないで
第2章 人と金と…

* * *


39度の高熱。
あれだけ雨の中にいれば、当然と言えば当然……か。

当然大学は休み、一日中布団の中で過ごす。
大概の事は、一人で良かったと思うのに。体調を崩した時だけは……淋しさを感じる。
音のない部屋。
微かに、秒針を刻む音がする。

カチカチカチカチ……

まるで鼓動の様で。
施設にいた頃──淋しさを紛らわす為に、枕を抱いてその音を聞いていた。

「……」

同じ様にして、枕を抱く。
蕎麦殻のそれは、あの時の様な柔らかさなんてなくて。少しでも体を動かせば、耳元でザザザァ……と激しい雨のような音がした。


──祐輔くん……


祐輔くんにとって私は、特別でも何でもない。
数いる客の一人。……しかも、お金を落とさない、迷惑な客。

想定していた金額よりも、もっと貢がないと。
……そうしなければ、認めて貰えない。
祐輔くんにも。祐輔くんの先輩にも。


プルル……

テーブルに置いた携帯が、音を鳴らし震えながら移動する。
鉛の様に重い体を起こし額に手を当て、テーブル前に移動した。

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