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私を抱いて…離さないで
第2章 人と金と…
「……はい」
電話に出てから、相手を確認していなかった事に気付く。
……もし祐輔くんだったら……
そんな不安と緊張で、頭がクラクラとした。
『果穂ちゃん?……安藤だけど』
「………あ、」
先輩──
ホッと胸を撫で下ろしたものの、何処か残念な気持ちもあって。それらが複雑に絡み合う。
『大丈夫? 今日、休んだって聞いたけど』
「……え」
『風邪、引いてない?』
「……」
人恋しいからか……先輩の声が、いつもより優しく聞こえる。
大丈夫です、って言って……昨日の御礼も一緒に伝えて……
それで、早く電話を切ってしまえばいいのに。
中々、それが出来ない──
『……果穂ちゃん?』
「あ、……」
……なん、で。
よく、解んない。
何でいま……涙なんか……
『今、家だよね。……今からそっち行くから。待ってて』
「──!」
すすり泣く声が、聞こえてしまったのだろうか。
先輩の言葉を最後に、プッと通話が切れる。
「………」
ここに、って……
……そっか。
先輩、ここの場所、知ってるんだよね……