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私を抱いて…離さないで
第2章 人と金と…
「果穂ちゃん?」
「……」
揺れる視界。グラグラする足元。
沈んでいく、自尊心。
廊下を歩く人達が、此方をチラッと見て通り過ぎる。その中には、先輩の取り巻きも………
「……っ、」
堪らず後退り、踵を返して床を蹴った。
背後から聞こえる、先輩の声。
……ただ、普通に。目立たず。平和に学校生活を送れれば、それで良かったのに……
『もしもし、果穂ちゃん?』
『バースデーイベントの日だけど、予定とか大丈夫?』
『……果穂ちゃんには、是非来て欲しいな』
スマホを耳に当て、再生した留守電を聞く。
入っていたのは全て、祐輔くんから。変わらず元気で、明るい声。だけど……
″………そうですね。考えておきます″
先日。雨に濡れたまま聞いた美麗の声は、怖い位に冷め切っていた。
「……」