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兄の帰還 壁越しに聞こえる妻の嬌声
第2章 壁越しに聞こえる妻の嬌声
10時を回ったところで、会はお開きになった。
僕たちは、ほろ酔い気分で客室に向かった。隣合った二部屋を取ってある。
僕は二人よりも早く歩いて、先に一人で部屋の中に入ると、ドアを閉めた。
「颯太くん、開けて」
琴美の声がした。オートロックがかかってるから、外から開けることはできない。
僕は、大きく深呼吸してから、
「ごめん、開けられない」と答えた。
「どうしたの? 何かあったの?」
「気分が悪いんだ。今日は、ここで一人で寝るから、琴美は兄さんの部屋で寝てくれないか」
「えっ!?」
ドアの外で琴美が固まるのがわかった。
「どうかしたのか?」
様子がおかしいことに気付いたのだろう。兄の声が聞こえた。こちらのドアに近づいてくる。
「颯太くん、気分が悪いから、一人で寝るって……」
「しょうがないな」兄の声が聞こえた。「颯太、大丈夫か? 医者を呼ぼうか?」
「兄さん、ありがとう。飲み過ぎただけだと思う。ひと晩寝れば治るよ。すまないけど、琴美をそっちに寝かしてあげてくれないかな」
「それはお安い御用だけど……えっ、なんだよ、それ!」
「多分、颯太くんは、私たちに気を利かせているつもりなのよ」
「そんなこと言ったって、おまえ……そんなのできるわけないだろ」
兄はようやく事態が理解できたようだ。気が動転しているのがわかる。
「颯太くん、ふざけないで。ドアを開けて」
琴美がドアを叩いた。でも僕に開ける気はない。
「ふぜけてなんかないよ。僕は、一人で寝たいだけだ」
「颯太くん……」
琴美にも僕の意志が強いことがわかったのだろう。ドアを叩くのをやめた。
僕たちは、ほろ酔い気分で客室に向かった。隣合った二部屋を取ってある。
僕は二人よりも早く歩いて、先に一人で部屋の中に入ると、ドアを閉めた。
「颯太くん、開けて」
琴美の声がした。オートロックがかかってるから、外から開けることはできない。
僕は、大きく深呼吸してから、
「ごめん、開けられない」と答えた。
「どうしたの? 何かあったの?」
「気分が悪いんだ。今日は、ここで一人で寝るから、琴美は兄さんの部屋で寝てくれないか」
「えっ!?」
ドアの外で琴美が固まるのがわかった。
「どうかしたのか?」
様子がおかしいことに気付いたのだろう。兄の声が聞こえた。こちらのドアに近づいてくる。
「颯太くん、気分が悪いから、一人で寝るって……」
「しょうがないな」兄の声が聞こえた。「颯太、大丈夫か? 医者を呼ぼうか?」
「兄さん、ありがとう。飲み過ぎただけだと思う。ひと晩寝れば治るよ。すまないけど、琴美をそっちに寝かしてあげてくれないかな」
「それはお安い御用だけど……えっ、なんだよ、それ!」
「多分、颯太くんは、私たちに気を利かせているつもりなのよ」
「そんなこと言ったって、おまえ……そんなのできるわけないだろ」
兄はようやく事態が理解できたようだ。気が動転しているのがわかる。
「颯太くん、ふざけないで。ドアを開けて」
琴美がドアを叩いた。でも僕に開ける気はない。
「ふぜけてなんかないよ。僕は、一人で寝たいだけだ」
「颯太くん……」
琴美にも僕の意志が強いことがわかったのだろう。ドアを叩くのをやめた。