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BL短篇集
第7章 クリスマス・イヴ
最悪だ。

『悪いな。親がそろそろ身を固めろってさ。相手、○○病院の院長の娘だからさ、まあいいかなって』

それ、タバコに火を点けながら言うことなのか。

『お前だって分かって付き合ってたんだろ?お前と俺、分不相応だってこと』


最悪だ。

握り締めた拳に力を込める。

違う。これはアイツのタバコの煙が滲みただけだ。

身体中に力を込めて歩く。

見るな。誰もおれを見るな。

まるで、おれだけが光から取り残された真っ黒な闇になったみたいだ。

その一筋の闇が、ネオンが煌びやかに光る街を切り裂いて歩く。

すべて黒になってしまえ。

そうすれば、おれは誰からも見えなくなる。

気がつけば、おれの願いが叶ったかのような街の明かりの届かない、人気の少ない路地裏に入っていた。
あるのは、怪しい光を放つ安っぽいラブホテルの看板だけだ。

「――――――!!!」
「!?」

ドスンっと勢いよく体当たりされた。

「頼む!かくまってくれ!!」
「は?」
言うが早いか、男はおれのコートの後ろ側に潜り込んだ。
つーか、バレるだろ、普通。
数秒して、走ってきたオッサンが俺に
「君!今ここに赤い格好をした不審者を見なかったか!」
バレてないのか?
「あー・・あっちに走っていきましたけど」
おれは適当に向こうを指さす。
「そうか。ありがとう。君も未成年だろ、早く帰りなさい」
それは余計なお世話だ。
オッサンはそう言うと、おれの指した方へ走っていった。

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