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彼の世界は官能で出来ている。
第13章 巨匠の娘、レジェンドの弟子

「お母さん――――…不味い豚汁ある?」


「帰ってくるなり失礼な娘ね!あるけど!」


すると、父さんが渋い顔をする。


「百々子――――…今日のは一段とヤバイから覚悟して食べろ!」


コソッと耳打ちをする父さんは、すでに食べた母の豚汁に「おぇ!」っと顔を歪ませる。



「今日はね、ピーマンが安かったから大量に入れてみたの!ほら、ピーマンの肉詰め的な発想で!」




「――――やべぇ香りがプンプンする!」



母はどや顔で私の前に…豚汁を出した。




「こ、これは!?――――入れるにしても限度があるだろ!ピーマンの海じゃないか!豚汁要素はどこに!?」



「豚汁要素しかないでしょうが!」



ダメだ!何年たっても――――…母の豚汁は上手くならない気がする!



こんな時…瑛斗がいてくれたら…こんな不味い豚汁だって、極上の料亭の味に生まれ変わらせてくれるんだろうなぁ…



「――――瑛斗なら…グッ…」



私は母の不味い豚汁を食べながら――――…吹っ切ろうと決めた瑛斗の事を思い出していた。




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