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恋する真珠
第1章 海と真珠
緊張しながら箸を動かしていると、涼太の手が止まった。
男らしい太い眉が寄せられ、唸るような声が響いた。
「おい。ちょっと待て」
「へ?」
思わず驚いて、箸を止める。
見ると涼太がしかつめらしい表情で瑠璃子がつついている鰈を凝視していた。
「なんて食べ方しているんだ」
「…え?…」
瑠璃子はぽかんと口を開ける。
「魚の食べ方が下手すぎる!
ほら、箸を貸せ」
慌てて自分の箸を渡す。
涼太は瑠璃子の箸を受け取ると、瑠璃子の鰈でなくまだ手付かずの自分の鰈に箸を入れ始めた。
「いいか?まずは縁側の方から身に沿って箸を入れるんだ。
そうして上の身を骨に沿って外す。
それを食べたら大骨を外して下の身を食べる。
縁側の周りが一番旨いから残すな。
多少の小骨は噛み砕け。カルシウムだ」
「…わあ…!」
鰈の煮付けは魔法のように綺麗に身離れし、食べやすいように皿に現れた。
「…お魚…骨があるから苦手で…。
今まではママか家政婦さんに取ってもらってたから…」
涼太は眼を丸くする。
「…お前…いくつだ?」
「…十四歳…。
だって、まだ子どもだもん」
呆れられたのにむっとして口を尖らす。
涼太はやれやれ…と肩を竦めると、にやりと笑った。
「都会のお嬢様はしようがねえなあ」
反論しようとする瑠璃子の前に綺麗に解された鰈の煮付けの皿が押しやられ、瑠璃子の箸が手渡される。
「食え」
「…え?…でも…」
解してくれたのは涼太のまだ手付かずの鰈だ。
これを瑠璃子が食べたら涼太は何を食べるのだろう…と思っていると、ひょいと瑠璃子の鰈の皿に大きな手が伸びた。
「俺はこれを食う」
「え!?だ、だってこれ、私が食べちゃって…」
「まだまだ全然食ってねえじゃねえか。
ああ…こんな下手くそな食い方して…。
もったいねえなあ。澄佳の鰈が泣くぞ」
「そ、そういう問題じゃなくて…」
…私が口を付けたのに…!
「早く食え。
子どもはガタガタ言わずに大人の言うことを聞け」
有無を言わさぬ声が飛び、瑠璃子は慌てて箸を付ける。
「い、いただきます…!」
涼太が解してくれた鰈の身を口に入れる。
…甘辛く煮付けられた鰈が口の中でふわりと蕩けた。
「…美味しい…!」
思わず叫んだ瑠璃子を見て、涼太が嬉しそうに眼を細めた。
「魚は上手く食えば美味いんだ。
今度からは自分でやれよ」
そうして、瑠璃子の鰈をぱくりと食べた。
男らしい太い眉が寄せられ、唸るような声が響いた。
「おい。ちょっと待て」
「へ?」
思わず驚いて、箸を止める。
見ると涼太がしかつめらしい表情で瑠璃子がつついている鰈を凝視していた。
「なんて食べ方しているんだ」
「…え?…」
瑠璃子はぽかんと口を開ける。
「魚の食べ方が下手すぎる!
ほら、箸を貸せ」
慌てて自分の箸を渡す。
涼太は瑠璃子の箸を受け取ると、瑠璃子の鰈でなくまだ手付かずの自分の鰈に箸を入れ始めた。
「いいか?まずは縁側の方から身に沿って箸を入れるんだ。
そうして上の身を骨に沿って外す。
それを食べたら大骨を外して下の身を食べる。
縁側の周りが一番旨いから残すな。
多少の小骨は噛み砕け。カルシウムだ」
「…わあ…!」
鰈の煮付けは魔法のように綺麗に身離れし、食べやすいように皿に現れた。
「…お魚…骨があるから苦手で…。
今まではママか家政婦さんに取ってもらってたから…」
涼太は眼を丸くする。
「…お前…いくつだ?」
「…十四歳…。
だって、まだ子どもだもん」
呆れられたのにむっとして口を尖らす。
涼太はやれやれ…と肩を竦めると、にやりと笑った。
「都会のお嬢様はしようがねえなあ」
反論しようとする瑠璃子の前に綺麗に解された鰈の煮付けの皿が押しやられ、瑠璃子の箸が手渡される。
「食え」
「…え?…でも…」
解してくれたのは涼太のまだ手付かずの鰈だ。
これを瑠璃子が食べたら涼太は何を食べるのだろう…と思っていると、ひょいと瑠璃子の鰈の皿に大きな手が伸びた。
「俺はこれを食う」
「え!?だ、だってこれ、私が食べちゃって…」
「まだまだ全然食ってねえじゃねえか。
ああ…こんな下手くそな食い方して…。
もったいねえなあ。澄佳の鰈が泣くぞ」
「そ、そういう問題じゃなくて…」
…私が口を付けたのに…!
「早く食え。
子どもはガタガタ言わずに大人の言うことを聞け」
有無を言わさぬ声が飛び、瑠璃子は慌てて箸を付ける。
「い、いただきます…!」
涼太が解してくれた鰈の身を口に入れる。
…甘辛く煮付けられた鰈が口の中でふわりと蕩けた。
「…美味しい…!」
思わず叫んだ瑠璃子を見て、涼太が嬉しそうに眼を細めた。
「魚は上手く食えば美味いんだ。
今度からは自分でやれよ」
そうして、瑠璃子の鰈をぱくりと食べた。