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恋する真珠
第1章 海と真珠
涼太と食べるお昼ご飯は美味しかった。
涼太は瑠璃子が話す取り止めのない話をふんふんと少ない相槌を打ちながら…それでもちゃんと聞いてくれているのが分かった。
「涼ちゃん、これから何するの?漁なの?」
すっかり打ち解けた瑠璃子は澄佳が呼ぶように親しげに呼んでみる。
「…今日はもう漁はしまいだ…てか、涼太さんな」
「このあとどうするの?暇?」
「暇じゃねえよ。これから漁協に行ってウチの仕事やって…。
漁師は魚釣りしてるだけじゃねえんだぞ」
「ウチの仕事って何?」
「親父とお袋と弟が魚屋と民宿を経営してんだ。
…ほら、メシを残さず食え」
「すごい!お魚屋さんと民宿?」
「民宿は主に夏だけな。
だから今はほぼ開店休業だ。
いいからメシを食えってば」
「…お腹いっぱいになっちゃった…。
澄佳さんのご飯すごく美味しいけど…いつもこんなにたくさん食べたことないから…」
しょぼんと肩を落とす瑠璃子に、カウンター越しに澄佳の優しい声がかかる。
「残していいのよ、瑠璃子ちゃん。
お母様から瑠璃子ちゃんが食が細いのは伺っているから」
「…ごめんなさい、澄佳さん…」
しゅんとする瑠璃子を暫く黙って見ていたが、やがて大きな手を前に出した。
「貸せ、手伝ってやる」
「え?」
「メシだよ。他は食えるだろ?」
瑠璃子は頷いてご飯茶碗を差し出す。
わしわしと大胆に…しかしとても綺麗な箸遣いで瑠璃子のご飯を食べ切ってくれるのを、胸が一杯になりながら見つめる。
「…段々食えるようになるさ。
毎日この海を眺めて学校に行って友達と遊んで…暇な時は散歩でもしろ。
潮風は身体にいいんだ。
あっと言う間に元気になる」
瑠璃子は息を飲んだ。
…瑠璃子がここに来た経緯を聞いているのだろう。
「…うん…」
「ここの子どもはみんな素朴で優しいやつばかりだ。
…お前は奇跡の美少女だからあっと言う間にアイドルだな」
取って付けたようなお世辞がぎこちない。
「…そうかな…」
笑いつつも鼻の奥がつんとなり、目の前のお皿が歪んで見えた。
ぽたぽたと自然に涙が溢れ落ちた。
涼太はそれらを全て察しながらも淡々と話し続ける。
「夏は泳げ」
「…私…カナヅチだよ…」
「俺が教えてやる。一日で泳げるようになる。
鬼のようにスパルタだけどな」
涙を拭う先に、優しい優しい眼が笑っていた。
「夏にはどんぶり飯が食えるようになるさ」
涼太は瑠璃子が話す取り止めのない話をふんふんと少ない相槌を打ちながら…それでもちゃんと聞いてくれているのが分かった。
「涼ちゃん、これから何するの?漁なの?」
すっかり打ち解けた瑠璃子は澄佳が呼ぶように親しげに呼んでみる。
「…今日はもう漁はしまいだ…てか、涼太さんな」
「このあとどうするの?暇?」
「暇じゃねえよ。これから漁協に行ってウチの仕事やって…。
漁師は魚釣りしてるだけじゃねえんだぞ」
「ウチの仕事って何?」
「親父とお袋と弟が魚屋と民宿を経営してんだ。
…ほら、メシを残さず食え」
「すごい!お魚屋さんと民宿?」
「民宿は主に夏だけな。
だから今はほぼ開店休業だ。
いいからメシを食えってば」
「…お腹いっぱいになっちゃった…。
澄佳さんのご飯すごく美味しいけど…いつもこんなにたくさん食べたことないから…」
しょぼんと肩を落とす瑠璃子に、カウンター越しに澄佳の優しい声がかかる。
「残していいのよ、瑠璃子ちゃん。
お母様から瑠璃子ちゃんが食が細いのは伺っているから」
「…ごめんなさい、澄佳さん…」
しゅんとする瑠璃子を暫く黙って見ていたが、やがて大きな手を前に出した。
「貸せ、手伝ってやる」
「え?」
「メシだよ。他は食えるだろ?」
瑠璃子は頷いてご飯茶碗を差し出す。
わしわしと大胆に…しかしとても綺麗な箸遣いで瑠璃子のご飯を食べ切ってくれるのを、胸が一杯になりながら見つめる。
「…段々食えるようになるさ。
毎日この海を眺めて学校に行って友達と遊んで…暇な時は散歩でもしろ。
潮風は身体にいいんだ。
あっと言う間に元気になる」
瑠璃子は息を飲んだ。
…瑠璃子がここに来た経緯を聞いているのだろう。
「…うん…」
「ここの子どもはみんな素朴で優しいやつばかりだ。
…お前は奇跡の美少女だからあっと言う間にアイドルだな」
取って付けたようなお世辞がぎこちない。
「…そうかな…」
笑いつつも鼻の奥がつんとなり、目の前のお皿が歪んで見えた。
ぽたぽたと自然に涙が溢れ落ちた。
涼太はそれらを全て察しながらも淡々と話し続ける。
「夏は泳げ」
「…私…カナヅチだよ…」
「俺が教えてやる。一日で泳げるようになる。
鬼のようにスパルタだけどな」
涙を拭う先に、優しい優しい眼が笑っていた。
「夏にはどんぶり飯が食えるようになるさ」