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恋する真珠
第1章 海と真珠
「…涼ちゃん…」
「バレエはトゥシューズとやらを履くんだろ?
…発表会で海となんとかの踊りを任されたって言ってただろ?」
「…海と真珠…」

…ずるいよ、こんなの…。
瑠璃子は脚の痛みのふりの涙を拭う。
「じゃあ早く乗れ。もたもたすんな」
無愛想な声が温かい。
「…うん…」
恐る恐る広くて分厚い背中に覆い被さる。
「しっかり捕まっとけ」
「うん…!」
…小さな頃に父親におんぶされて以来だ。
頑丈な首筋に抱きつくようにおぶさる。
Tシャツ越しの涼太の体温がじんわりと伝わる。

視界が不意にぐっと高くなる。
慌ててぎゅっとしがみつく。
「…本当に乗ったのか?軽いな、お前」
低い笑い声が背中越しに聞こえる。

道の向こう、スナックの前から冷やかすような口笛が聞こえた。
「よ!色男!お姫様をお城まで送ってあげて!」
先ほどの女がにやにやと笑いながら、ひらひらと手を振っていた。

…ふん…と鼻を鳴らし、涼太は気にかける様子もなく歩き出した。
「…いいの?あのひと…」
ちらりと振り返る。
女はふざけたように投げキスを寄越し、店に引っ込んだ。
「ああ。店があるからな」
「…あのひと…恋人?」
恐る恐る尋ねる。
「いや」
あっさりとした答えに逆に疑惑が生まれる。
「…じゃあ…セフレ?」
恐ろしい形相で涼太がじろりと睨みつけてきた。
「そういう下品な言葉を子どもが使うんじゃねえよ」
「…だってさ…あんなイチャイチャしてさ…」

深いため息が聞こえる。
「大人は色々あんだよ。
俺は三十だぞ?」
…聖人君子だと思ってたか?
と呟かれ…
「…思ってないけどさ…」
…がっしりした肩口にしょんぼりと貌を埋める。

…涼太は三十歳だ。
自分の倍以上の歳だ。
恋愛だってセックスだっていくらでも経験してきたのだろう。
仕方のないことだ。
けれど、悔しい。
自分の預かり知らない涼太が余りに多すぎることが悔しくて寂しい。
幼い自分が歯痒くて堪らない。
…こんなに好きなのに…。
こんなに苦しいほどに大好きなのに…。

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