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恋する真珠
第1章 海と真珠
…あと、二十分で港だ…。

瑠璃子は甲板に誰もいないのを確認して、AirPodsを耳に差し込み、先ほどまで練習していた「海と真珠」のバリエーションを再生する。

年末には発表会だ。
あと二ヶ月ほどしかない。
…頑張って練習しなきゃ…。

いつも最終便のフェリーには乗客は疎らであった。
その数人の乗客も海風が冷たい夜の甲板に出てくるような酔狂なひとはいない。

広い甲板は瑠璃子ひとりの舞台のようなものだった。
バレエのお稽古帰りにはだから、甲板でおさらいをするのが常だった。

…今日の服は白いニットのタートルネックのセーターに赤いタータンチェックのプリーツスカートだ。
ストラップ付きの黒のローヒールは踊るのに向いていた。

…「海と真珠のバリエーション」は女性二人で踊るバリエーションだ。
瑠璃子と一緒に踊るのは麻衣と言う若いOLだが、6歳から15歳までバレエを習っていたのでなかなかに上手だ。
「一緒に頑張ろうね」
といつも励まし合ってレッスンしている。
「瑠璃ちゃん、いつかうちに泊まって二人で練習しようよ。
それからカレーとパンケーキ食べに行こう!美味しい横須賀カレーの店があるんだよ」
「…麻衣さん、ダイエットするんじゃなかったでしたっけ?」
「あ、そうだった!」
二人は弾けるように笑った。

…そんな経験も、バレエを続けていて初めてのことだった。

…バレエって、楽しいんだな…。

瑠璃子は微笑みながら、音に合わせて踊り出す。

…アッサンブレ・グリッサード・ソッテ・パッセ・パディシャ…それからク・ドゥ・ピエ…
二人で手を繋いでからピケ・パドブレ…
パドブレは細かく、後脚が前に来るように…。
…ソッテのあと、音に遅れないようにしなきゃ…。

…軽快かつ海の底の風景を思わせる幻想的なロマンチックな音楽だ。

衣装は白いロマンチックチュチュだ。
…久しぶりに着られる…。

瑠璃子の胸は音楽と共に嬉しく弾む。

チュチュを広げるようにプリーツスカートをつまみ、潮風に乗りながらピケ・ターンを繰り返す…。
甲板の小さな灯りが、まるで舞台の照明のように瑠璃子を照らす。

…と…不意に、甲板の入り口から拍手の音と明るい声が響き、瑠璃子ははっと脚を止めた。

「ブラボー!素晴らしい!」

振り返る先に長身の貌立ちの整った…まだ若い青年が柔らかな微笑みを浮かべて佇んでいた。




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