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恋する真珠
第1章 海と真珠
「それでね、涼ちゃん。
なっちゃんたらね、田中先生の机の中にね、カエルを入れちゃってね、めっちゃ怒られたんだよ!
カエルってさ、初めて生で見たけどすごく可愛いね!
ねえ、涼ちゃん。カエルって飼える?」
息せききって喋るまるで賑やかなカナリアのような瑠璃子を、涼太は巧みに軽トラのハンドルを切りながらちらりと見遣る。
「シャレか?」
「へ?」
「カエルを飼える」
「…」
瑠璃子は次の瞬間、声を弾けさせて笑う。
「可笑しい!涼ちゃんたら!
涼ちゃんでも親父ギャグ言うんだね!」
「誰が親父ギャグだよ。お前が言い出したんだろう?」
軽く頭をはたかれ、瑠璃子はにこにこする。
「痛いなあ、もう…」
…少しも痛くなんかない。
涼ちゃんはいつも加減してくれている。
…長閑な海岸道路の先にこじんまりとした中学校の校舎が見えてきた。
涼太が軽くアクセルを踏み、車は軽やかに加速する。
「今日は横須賀でバレエか?」
「あ、うん。そう。発表会が近いから、レッスンの回数がふえちゃって…。
部活はお休みしてバレエに行く」
真っ直ぐに前を見たまま涼太が問いかける。
「何時だ?」
「え?」
「何時のフェリーだ?」
「…最終の…9時だけど…」
「9時40分にターミナルの駐車場にいる」
そっけない返事が直ぐさま返って来た。
「え…いいよ。涼ちゃん朝早いじゃん。
私まだバスあるし…」
「あのバスはだめだ。
…前にお前、地元の悪ガキらに絡まれていただろう。
夜に一人でバスは禁止だ」
苦虫を噛み潰したような貌できっぱりと言われる。
無愛想ではあるが、大らかで根は陽気な涼太がそんな厳しい貌をするのはとても珍しい。
「…でも…」
「でもじゃねえよ。子どもは大人の言うことを聞くんだよ。
いいな?」
ぶっきらぼうに言われ、反論する余地すらなかったけれど、じわじわと嬉しさが込み上げる。
「…うん。…ありがとう、涼ちゃん」
涼太は初めて助手席の瑠璃子を振り返り、
「何回も言うけど涼太さんな」
…と、太陽の光がぱあっと差し込んだような笑顔を見せた。
…まるで太陽の王様みたいだ…。
瑠璃子は思わず見惚れながら、再び弾けるように笑った。
なっちゃんたらね、田中先生の机の中にね、カエルを入れちゃってね、めっちゃ怒られたんだよ!
カエルってさ、初めて生で見たけどすごく可愛いね!
ねえ、涼ちゃん。カエルって飼える?」
息せききって喋るまるで賑やかなカナリアのような瑠璃子を、涼太は巧みに軽トラのハンドルを切りながらちらりと見遣る。
「シャレか?」
「へ?」
「カエルを飼える」
「…」
瑠璃子は次の瞬間、声を弾けさせて笑う。
「可笑しい!涼ちゃんたら!
涼ちゃんでも親父ギャグ言うんだね!」
「誰が親父ギャグだよ。お前が言い出したんだろう?」
軽く頭をはたかれ、瑠璃子はにこにこする。
「痛いなあ、もう…」
…少しも痛くなんかない。
涼ちゃんはいつも加減してくれている。
…長閑な海岸道路の先にこじんまりとした中学校の校舎が見えてきた。
涼太が軽くアクセルを踏み、車は軽やかに加速する。
「今日は横須賀でバレエか?」
「あ、うん。そう。発表会が近いから、レッスンの回数がふえちゃって…。
部活はお休みしてバレエに行く」
真っ直ぐに前を見たまま涼太が問いかける。
「何時だ?」
「え?」
「何時のフェリーだ?」
「…最終の…9時だけど…」
「9時40分にターミナルの駐車場にいる」
そっけない返事が直ぐさま返って来た。
「え…いいよ。涼ちゃん朝早いじゃん。
私まだバスあるし…」
「あのバスはだめだ。
…前にお前、地元の悪ガキらに絡まれていただろう。
夜に一人でバスは禁止だ」
苦虫を噛み潰したような貌できっぱりと言われる。
無愛想ではあるが、大らかで根は陽気な涼太がそんな厳しい貌をするのはとても珍しい。
「…でも…」
「でもじゃねえよ。子どもは大人の言うことを聞くんだよ。
いいな?」
ぶっきらぼうに言われ、反論する余地すらなかったけれど、じわじわと嬉しさが込み上げる。
「…うん。…ありがとう、涼ちゃん」
涼太は初めて助手席の瑠璃子を振り返り、
「何回も言うけど涼太さんな」
…と、太陽の光がぱあっと差し込んだような笑顔を見せた。
…まるで太陽の王様みたいだ…。
瑠璃子は思わず見惚れながら、再び弾けるように笑った。