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恋する真珠
第1章 海と真珠
「…大学生?」
涼太はじっと、駐車場に歩いて行く財前の後ろ姿を見つめる。
「大学生で…えっと…多家良やさんて言う和菓子屋さんなんだって」
フェリーの中で貰った名刺を涼太に差し出す。
「多家良や?」
「知ってるの?」
財前は少し離れた場所に止まっていた黒いクラウンの横に立った。
法被を着た初老の男が嬉しそうに出てきた。
「光彦坊ちゃん、お帰りなさいまし」
「…田代さん。
…迎えはいいって言ったのに…」
「光彦坊ちゃんを一人でタクシーなんて出来ませんよ。
大奥様がお待ちかねですよ。
坊ちゃんのお好きな鰻巻きと茶碗蒸しをお昼すぎからご用意されて…。
お一人暮らしだから栄養が偏っていらっしゃらないかってご心配されてましたよ」
「大体毎週来ているのに…母さんも大げさだな」
屈託のない笑い声が響いた。
二人の会話がつい耳に入ってしまい、思わず聞いていた瑠璃子は振り返った財前と眼が合った。
財前が手を振り、爽やかに笑った。
瑠璃子はぺこりと頭を下げる。
…財前を乗せたクラウンがゆっくりと走り去るのを見送りながら呟く。
「…坊ちゃんだって。
あのおじさんは番頭さんかな?」
「…多家良やと言えば江戸の昔から続く老舗の和菓子屋だからな。
番頭もいるだろう」
むすっとした涼太の言葉に驚いて振り返る。
「え?そうなの?」
「…落花生羊羹が有名なんだ。宮内庁御用達の菓子もあるらしい。
千葉では一番の和菓子屋だぞ」
…ほら、と名刺の裏を見せる。
「…わあ…。本当だ…。
東京と神奈川と埼玉と…。
へえ…。いっぱいお店があるんだね」
名刺裏には東京を始め、たくさんの支店の住所と電話番号が印刷されていた。
「…小さな店って言ってたんだけどね」
…町の小さな和菓子屋さんをイメージしていた。
「謙遜したんだろ。
…で?なんでこんな名刺持ってんだ?」
不機嫌そうな声でじろりと見下ろされる。
涼太はじっと、駐車場に歩いて行く財前の後ろ姿を見つめる。
「大学生で…えっと…多家良やさんて言う和菓子屋さんなんだって」
フェリーの中で貰った名刺を涼太に差し出す。
「多家良や?」
「知ってるの?」
財前は少し離れた場所に止まっていた黒いクラウンの横に立った。
法被を着た初老の男が嬉しそうに出てきた。
「光彦坊ちゃん、お帰りなさいまし」
「…田代さん。
…迎えはいいって言ったのに…」
「光彦坊ちゃんを一人でタクシーなんて出来ませんよ。
大奥様がお待ちかねですよ。
坊ちゃんのお好きな鰻巻きと茶碗蒸しをお昼すぎからご用意されて…。
お一人暮らしだから栄養が偏っていらっしゃらないかってご心配されてましたよ」
「大体毎週来ているのに…母さんも大げさだな」
屈託のない笑い声が響いた。
二人の会話がつい耳に入ってしまい、思わず聞いていた瑠璃子は振り返った財前と眼が合った。
財前が手を振り、爽やかに笑った。
瑠璃子はぺこりと頭を下げる。
…財前を乗せたクラウンがゆっくりと走り去るのを見送りながら呟く。
「…坊ちゃんだって。
あのおじさんは番頭さんかな?」
「…多家良やと言えば江戸の昔から続く老舗の和菓子屋だからな。
番頭もいるだろう」
むすっとした涼太の言葉に驚いて振り返る。
「え?そうなの?」
「…落花生羊羹が有名なんだ。宮内庁御用達の菓子もあるらしい。
千葉では一番の和菓子屋だぞ」
…ほら、と名刺の裏を見せる。
「…わあ…。本当だ…。
東京と神奈川と埼玉と…。
へえ…。いっぱいお店があるんだね」
名刺裏には東京を始め、たくさんの支店の住所と電話番号が印刷されていた。
「…小さな店って言ってたんだけどね」
…町の小さな和菓子屋さんをイメージしていた。
「謙遜したんだろ。
…で?なんでこんな名刺持ってんだ?」
不機嫌そうな声でじろりと見下ろされる。