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恋する真珠
第1章 海と真珠
「…はい。そうです…」
少しの沈黙ののち、瑠璃子はきっぱりと答えた。
「私、涼ちゃんが好きなんです」
口に出すと、すとんとその想いが胸の深いところに落ちてきた。
…涼ちゃんが好き。
涼ちゃんに会った時から、涼ちゃんを見るだけで胸がドキドキして、きゅんと締めつけられるように苦しくなって…でも嬉しくて幸せで泣きたくなるくらいに気持ちが高揚する…。
涼ちゃんに長く会えない時はなんだか心が寂しくてご飯も美味しくない。
けれど涼ちゃんから短いLINEが来るだけで水を得た魚のように元気になる。
見るものすべてが…世界がきらきらとして美しい…。

「…そう…。
彼は瑠璃子ちゃんのことをどう思っているのかな?」
財前に穏やかに尋ねられ、しゅんとなる。
「…全然相手にしてもらえません。
お前はまだ子どもだ…て」
「そうか…彼はだいぶ歳上だものね」
それはそうだろうな…というような表情を見て、勝気な瑠璃子はついムキになる。
「でも!私は涼ちゃんのお嫁様になるって決めているんです。
十八になったらまた私からプロポーズするって決めているんです!」

驚いたように財前が眼を見張る。
そうして、少し苦いような表情で微笑む。
「…そう。
涼太さんは瑠璃子ちゃんに愛されているんだね。
…でも、十八歳になった瑠璃子ちゃんを涼太さんは必ず好きになってくれるかな?あと四年もあるよ?
涼太さんは見たところすごく男前だし、ほかに恋人がいるかもしれないよ?
瑠璃子ちゃんに言わないだけでね」

…あのスナックのママが脳裏に浮かぶ…。
おっぱいとお尻の大きな…すごく色っぽいひと…。
私みたいに痩せっぽちでおっぱいもお尻も小さくてがりがりのえんぴつみたいな体型じゃなくて…すごく女らしくてセクシーで…。

瑠璃子は不意に胸を突き上げるような怒りと惨めさを感じ、荒々しく立ち上がった。
「どうして⁈」
「え?」
財前が不意打ちのような瑠璃子の行動に眼を見張る。
「どうしてそんな意地悪言うの⁈
…そんなこと…分かってるよ!私はまだまだ子どもで、涼ちゃんのド圏外だって!
でもそんなこと!貴方に言われたくない!私や涼ちゃんのこと、よく知りもしない貴方に!
余計なお世話だよ!」

気がつくと周りの乗客が振り返るような大声が出ていた。
「…瑠璃子ちゃん…」
驚きのあまり言葉を失くす財前を残し、瑠璃子は客室を飛び出した。



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