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恋する真珠
第1章 海と真珠
何なのあのひと!
失礼なひと!
瑠璃子は階段を駆け上がり、甲板に出ると船首近くの手摺につかまり、怒りを必死で抑え込む。
…けれど直ぐに、この苛立ちは本当は自分自身へのものなのだと気づく。
…未熟で、幼い自分に劣等感を抱いていて…涼太にはほかに相応しい誰かがいるのではないかと、常に気にして恐れている自分を、財前に言い当てられたような気がして…。
それでむきになって腹立ちを露わにしてしまったのだ。
…八つ当たりだ。
財前は、何も悪くはないのに…。
…こんなところが子どもなのだ…。
こんなんじゃ…涼ちゃんの恋人にしてもらえないのに…。
涙に房総半島の小さな街灯りがゆらゆらと滲む。
夜の潮風は冷たく、涙もすぐに凍りつきそうだ。
頰に流れる涙を乱暴に拭う。
…情けない…醜い私…。
手摺に貌を伏せる。
「…ごめんね…。瑠璃子ちゃん…」
…背後から聞こえるのは、財前の申し訳なさそうな声だ…。
「君を傷つけるつもりはなかったんだ…」
…一息吐く気配がして、何かを決意したような強い意志を感じさせる声が聞こえた。
「…僕は、涼太さんに嫉妬したんだ。
君に愛されている涼太さんが羨ましくて…」
振り返る瑠璃子の前に、思わぬ近さで財前が佇んでいた。
…甲板の灯りに、財前の真っ直ぐな瞳が煌めいた。
「君が好きだ。
…もう、気づいているだろうけれど…。
僕は、君に恋している」
失礼なひと!
瑠璃子は階段を駆け上がり、甲板に出ると船首近くの手摺につかまり、怒りを必死で抑え込む。
…けれど直ぐに、この苛立ちは本当は自分自身へのものなのだと気づく。
…未熟で、幼い自分に劣等感を抱いていて…涼太にはほかに相応しい誰かがいるのではないかと、常に気にして恐れている自分を、財前に言い当てられたような気がして…。
それでむきになって腹立ちを露わにしてしまったのだ。
…八つ当たりだ。
財前は、何も悪くはないのに…。
…こんなところが子どもなのだ…。
こんなんじゃ…涼ちゃんの恋人にしてもらえないのに…。
涙に房総半島の小さな街灯りがゆらゆらと滲む。
夜の潮風は冷たく、涙もすぐに凍りつきそうだ。
頰に流れる涙を乱暴に拭う。
…情けない…醜い私…。
手摺に貌を伏せる。
「…ごめんね…。瑠璃子ちゃん…」
…背後から聞こえるのは、財前の申し訳なさそうな声だ…。
「君を傷つけるつもりはなかったんだ…」
…一息吐く気配がして、何かを決意したような強い意志を感じさせる声が聞こえた。
「…僕は、涼太さんに嫉妬したんだ。
君に愛されている涼太さんが羨ましくて…」
振り返る瑠璃子の前に、思わぬ近さで財前が佇んでいた。
…甲板の灯りに、財前の真っ直ぐな瞳が煌めいた。
「君が好きだ。
…もう、気づいているだろうけれど…。
僕は、君に恋している」