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恋する真珠
第1章 海と真珠
帰り道、涼太はくどいほどに
「本当にあいつにおかしなことはされなかったな?」
と念を押した。
「…されてないよ」
跪かれたことは内緒だ。
…スカートを掴まれて、頬ずりされたことも…。
「…好きだって言われただけだよ」
「…そうか…」
それっきり黙り込む涼太に理不尽な怒りが込み上げる。
「そうかって…涼ちゃんは気にならないの?
私が財前さんを好きにならないかって」
ちらりと瑠璃子を見遣ると前を向き、ハンドルを握り直す。
答えはない。
雄々しいブロンズ色の横貌には厳しい表情が張り付いているだけだ。
…その表情は冷静で、まるで瑠璃子が誰を好きになろうとどうでもいいような様子だ。
追い討ちをかけるような激しい怒りに駆られる。
「気にならないんだね!
私が財前さんを好きになってもいいんだね!」
暫しの沈黙ののち、淡々とした…抑揚のない声が聞こえた。
「…お前が本当に好きになるなら…仕方ないだろう」
かっと煮えたぎるような怒りが体内を駆け巡る。
次の瞬間、瑠璃子は叫んでいた。
「降ろして!」
「瑠璃子?」
「降ろしてくれなきゃ飛び降りる!」
言うが早いかドアレバーに手を掛ける。
「おい!」
涼太が慌ててブレーキを踏み締める。
子犬が転がるように飛び降り、ドアを叩きつけた。
澄佳の家は目の前だ。
「瑠璃子!」
窓を開けて叫ぶ涼太を振り返り、睨みつける。
「涼ちゃんのバカ!大嫌い!」
あとは脱兎の如く駆け出し、店に飛び込んだ。
…けれど、涼太は追いかけてはこなかった。
しばらくして、涼太の軽トラが走り去る音が聞こえ…やがて遠ざかっていったのだ。
「本当にあいつにおかしなことはされなかったな?」
と念を押した。
「…されてないよ」
跪かれたことは内緒だ。
…スカートを掴まれて、頬ずりされたことも…。
「…好きだって言われただけだよ」
「…そうか…」
それっきり黙り込む涼太に理不尽な怒りが込み上げる。
「そうかって…涼ちゃんは気にならないの?
私が財前さんを好きにならないかって」
ちらりと瑠璃子を見遣ると前を向き、ハンドルを握り直す。
答えはない。
雄々しいブロンズ色の横貌には厳しい表情が張り付いているだけだ。
…その表情は冷静で、まるで瑠璃子が誰を好きになろうとどうでもいいような様子だ。
追い討ちをかけるような激しい怒りに駆られる。
「気にならないんだね!
私が財前さんを好きになってもいいんだね!」
暫しの沈黙ののち、淡々とした…抑揚のない声が聞こえた。
「…お前が本当に好きになるなら…仕方ないだろう」
かっと煮えたぎるような怒りが体内を駆け巡る。
次の瞬間、瑠璃子は叫んでいた。
「降ろして!」
「瑠璃子?」
「降ろしてくれなきゃ飛び降りる!」
言うが早いかドアレバーに手を掛ける。
「おい!」
涼太が慌ててブレーキを踏み締める。
子犬が転がるように飛び降り、ドアを叩きつけた。
澄佳の家は目の前だ。
「瑠璃子!」
窓を開けて叫ぶ涼太を振り返り、睨みつける。
「涼ちゃんのバカ!大嫌い!」
あとは脱兎の如く駆け出し、店に飛び込んだ。
…けれど、涼太は追いかけてはこなかった。
しばらくして、涼太の軽トラが走り去る音が聞こえ…やがて遠ざかっていったのだ。