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恋する真珠
第1章 海と真珠
「瑠璃子!動くな!」
防波堤をいとも軽々と駆け登り、走り寄る涼太に身を捩って叫ぶ。
「来ないでってば!」
じりじりと、海に突き出した防波堤の突端に後退りする瑠璃子に、涼太ははっと脚を止める。
「…べつに…いいんだよ」
「何がだよ!」
「私のこと…好きじゃなくてもいいんだよ…」
苦しげに涼太が凛々しい眉を顰める。
「…何を…」
「好きじゃなくてもいいから…同情なんてしないでよ」
「…瑠璃子…」
「…同情で優しくなんてしないで!
勘違いしちゃうから!」
…涼ちゃんが私を見る眼や言葉…。
ふとした弾みで触れる分厚い手の温かさや…。
色々なものすべてを…。
自分の都合が良いように勘違いしてしまいたくなるから…。
「…瑠璃子…。
俺は…お前が好きだよ」
苦しげな振り絞るような低い声…。
瑠璃子は泣き笑いする。
「…涼ちゃんは優しいね…。
こんな時でも、優しい嘘を吐く…」
「嘘じゃねえよ!
お前が好きだよ!
…だけどな、俺は…」
痛みを堪えるような表情を見ていられずに、頭を振る。
「嘘!嘘つき!」
「嘘じゃねえってばよ!」
苛立ったようにこちらに近づく涼太に、瑠璃子は唇を噛み締める。
…ふと、自分のか細い首筋に手を遣り…その指先に触れた金鎖を思い切り引きちぎる。
それを涼太の前に突き出す。
…本真珠がトップヘッドのネックレスは上海から母、由貴子が瑠璃子の誕生日祝いに送ってくれたミキモトのものだ。
「…本当に私が好き?」
「好きだよ…。だから!俺の話を聞け!」
瑠璃子はわざと高慢に真珠のネックレスを突き出す。
「…これ、ママが私に贈ってくれた真珠のネックレスなの。誕生日のプレゼントに…て。
ママは毎年誕生日のたびに真珠のアクセサリーをプレゼントしてくれるの」
「…ああ。すごく…綺麗だよな」
不器用に言葉を口にする涼太が切ない。
「…大切なの。すごく」
「当たり前だ。お前のお袋さんの贈り物だ」
…不器用だけど優しい言葉…。
瑠璃子は唇を歪める。
「…これ、取ってきてよ。涼ちゃん。
私の大切な宝物。
私が好きなら取ってきてくれるよね?」
言うが早いか、真珠のネックレスを思い切り眼下に広がる海に放り投げる。
「瑠璃子!」
涼太は叫ぶと同時に瑠璃子に駆け寄り、防波堤の足元を見下ろす。
「…馬鹿野郎!」
短く唸るように言い放ち、涼太は間髪を入れずに海に飛び込んだ。
防波堤をいとも軽々と駆け登り、走り寄る涼太に身を捩って叫ぶ。
「来ないでってば!」
じりじりと、海に突き出した防波堤の突端に後退りする瑠璃子に、涼太ははっと脚を止める。
「…べつに…いいんだよ」
「何がだよ!」
「私のこと…好きじゃなくてもいいんだよ…」
苦しげに涼太が凛々しい眉を顰める。
「…何を…」
「好きじゃなくてもいいから…同情なんてしないでよ」
「…瑠璃子…」
「…同情で優しくなんてしないで!
勘違いしちゃうから!」
…涼ちゃんが私を見る眼や言葉…。
ふとした弾みで触れる分厚い手の温かさや…。
色々なものすべてを…。
自分の都合が良いように勘違いしてしまいたくなるから…。
「…瑠璃子…。
俺は…お前が好きだよ」
苦しげな振り絞るような低い声…。
瑠璃子は泣き笑いする。
「…涼ちゃんは優しいね…。
こんな時でも、優しい嘘を吐く…」
「嘘じゃねえよ!
お前が好きだよ!
…だけどな、俺は…」
痛みを堪えるような表情を見ていられずに、頭を振る。
「嘘!嘘つき!」
「嘘じゃねえってばよ!」
苛立ったようにこちらに近づく涼太に、瑠璃子は唇を噛み締める。
…ふと、自分のか細い首筋に手を遣り…その指先に触れた金鎖を思い切り引きちぎる。
それを涼太の前に突き出す。
…本真珠がトップヘッドのネックレスは上海から母、由貴子が瑠璃子の誕生日祝いに送ってくれたミキモトのものだ。
「…本当に私が好き?」
「好きだよ…。だから!俺の話を聞け!」
瑠璃子はわざと高慢に真珠のネックレスを突き出す。
「…これ、ママが私に贈ってくれた真珠のネックレスなの。誕生日のプレゼントに…て。
ママは毎年誕生日のたびに真珠のアクセサリーをプレゼントしてくれるの」
「…ああ。すごく…綺麗だよな」
不器用に言葉を口にする涼太が切ない。
「…大切なの。すごく」
「当たり前だ。お前のお袋さんの贈り物だ」
…不器用だけど優しい言葉…。
瑠璃子は唇を歪める。
「…これ、取ってきてよ。涼ちゃん。
私の大切な宝物。
私が好きなら取ってきてくれるよね?」
言うが早いか、真珠のネックレスを思い切り眼下に広がる海に放り投げる。
「瑠璃子!」
涼太は叫ぶと同時に瑠璃子に駆け寄り、防波堤の足元を見下ろす。
「…馬鹿野郎!」
短く唸るように言い放ち、涼太は間髪を入れずに海に飛び込んだ。