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恋する真珠
第2章 恋するカナリア
「涼ちゃんの気持ちは確かめたもん!」
唇を尖らす瑠璃子に、由貴子は京雛のように雅やかに美しい瞳で見遣る。
「でも、涼太さんは本当にお付き合いもしないで瑠璃ちゃんにプロポーズなさるかしらね?」
こんな時の由貴子はさりげなくひんやりと意地悪だ。
「ママは反対しているわけではないのよ。
でも、高校を卒業したら貴女は大学生になるでしょう?
学生結婚するつもり?
就職はどうするの?」
嫋やかな声だけに、その静かな圧力が瑠璃子を黙らせる。

「まあ…由貴子さん。
それは涼太さんも色々考えているだろうし…。
まずはお付き合いをして二人でその後のことを良く話し合えば良いんじゃないかな」
宮尾が二人の間を取り持つように口を開いた。
「瑠璃ちゃんは世間知らずだから…。
十八歳と言えば結婚より進学を第一に考えなくてはならない年齢よ。
…貴女、大学はどこを受験するの?
…千葉大に進学できるほど、お勉強熱心ではないわよね?」
「…う…」

痛いところを突かれて、瑠璃子は唸った。
…瑠璃子は勉強はあまり得意ではなかった。
国語や英語は好きだけれど、理数系は苦手でいつも赤点ぎりぎりの成績だった。
教育熱心な由貴子は、離れていてもそれら全てを把握していたのだ。
「ママは別に柊司さんや真紘さんみたいに東大に行きなさいとは言わないわ。
瑠璃ちゃんが行きたい大学でもいいのよ。
…でも、亡くなったお父様に報告するのが恥ずかしいようないい加減な進路を選んで欲しくはないの」
…そう言われると、ぐうの音も出ない瑠璃子であった。

「…瑠璃ちゃん。
涼太さんのことはママも大好きよ。
頼もしくて素晴らしい男性だと思うわ。
でも貴女が大学生になってからじっくりお付き合いをして、将来のことを考えるので遅くはないんじゃないかしら?」
そう言い放つと、由貴子は典雅な美貌で微笑みながら優美な所作で新しいお茶を淹れるのであった。

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