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恋する真珠
第2章 恋するカナリア
成田空港へは兄、柊司が迎えに来てくれた。

…夏休みのこと、人混みでごった返す広いロビーの中、すらりとした長身の兄の背後に逞しい大柄な涼太の姿をきょろきょろと探したが…やはりいない。

…「俺は漁だから迎えには行けねえよ。
気をつけて帰ってこい」
昨日、スタンプも絵文字も何もない無愛想なLINEが来ていたから知っていたけれど…やはり少しがっかりする。

「お帰り、瑠璃子。
上海は楽しかった?
母様はお元気だった?
荷物を貸しなさい。疲れただろう?」
瑠璃子のスーツケースを軽々と持ちながら、兄は優しく尋ねる。

…柊司は相変わらず由貴子を母様と呼ぶ。
常に由貴子に敬意を払い、さながら王子が敬愛する高貴な王妃のような恭しい扱いをする兄は、やはり母に特別な思いがあるのではないかと瑠璃子は密かに思う。
…それは、色恋のものではないとしても…。
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