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恋する真珠
第2章 恋するカナリア
「…なんだか…上手くはぐらかされたような気がするなあ…」
風呂上がり、小さな中庭に面した縁側に座り髪を乾かせながら瑠璃子は呟いた。
澄佳の家の中庭には小さなビオトープの池があり、そこにはメダカや金魚が生き生きと泳いでいる。
それを朝な夕なに眺めるのは瑠璃子の楽しみのひとつであった。


…「じゃあな、土産サンキュー。
澄佳と柊司さんによろしく」
床にへなへなと座り込んだままの瑠璃子を残し、涼太はあっさりと店を後にしたのだ。

「涼ちゃん!私の誕生日…!」
…と叫んだけれど、涼太は既に店の外だった。


「…私の誕生日、覚えてんのかなあ…」
白い頰を膨らませ、バスタオルでやや乱暴に髪を拭く。

「…なあに?どうしたの?
瑠璃ちゃん、ご機嫌斜めだわね?」
奥から貌を覗かせたのは、澄佳だ。
「…澄佳さん…」
振り向いて、澄佳の貌を見て思わず目を奪われる。

…湯上りの澄佳は白地に夕顔が描かれた浴衣に鮮やかな藍色の帯を締めていた。
艶やかな洗い髪を無造作にバレッタで纏めているのだが、おくれ毛が透き通るように白く細いうなじに落ちかかり、なんとも言えぬ色香を醸し出していた。

上気した肌がうっすらと桜色に染まり、潤んだ黒眼勝ちの瞳といい、形の良い瑞々しく紅い唇といい…その情緒ある美しさに、瑠璃子はうっとりと見惚れてしまったのだ。
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