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恋する真珠
第2章 恋するカナリア
ターミナル前で麻衣と別れて、瑠璃子はフェリーに乗船する。
夜九時の最終便…。
バレエのレッスンの帰りは、相変わらずフェリーであった。
出航の鐘がのどかに鳴る。
もうすっかり馴染んだ大海原の夜景を、瑠璃子は船首の甲板に立ちじっと眺める。
…夏の夜の海は大好きだ。
少しひんやりとした湿った海風が心地よい。
目の前に広がる濃紺の闇と海の水面…。
…怖いような、それでいてぞくぞくするようなスリリングな風景にいつも魅せられるのだ。
今夜は夜光虫が波間に漂い…それはまるで夜空から落ちてきた星屑のようでもあった。
うっとりと見つめている瑠璃子の背後から、静かに声はかかった。
「…夜光虫?
まるで蛍だね」
振り返る先に佇んでいるのは、財前光彦だった。
「…財前さん…」
「まだ財前さんか。
…そろそろ名前で呼んで欲しいな。瑠璃子ちゃん」
…こんばんは。
微笑みながら瑠璃子の前に立った財前は、高価そうなサマーニットをさらりと着こなした如何にも育ちの良い青年といった姿だった。
夜九時の最終便…。
バレエのレッスンの帰りは、相変わらずフェリーであった。
出航の鐘がのどかに鳴る。
もうすっかり馴染んだ大海原の夜景を、瑠璃子は船首の甲板に立ちじっと眺める。
…夏の夜の海は大好きだ。
少しひんやりとした湿った海風が心地よい。
目の前に広がる濃紺の闇と海の水面…。
…怖いような、それでいてぞくぞくするようなスリリングな風景にいつも魅せられるのだ。
今夜は夜光虫が波間に漂い…それはまるで夜空から落ちてきた星屑のようでもあった。
うっとりと見つめている瑠璃子の背後から、静かに声はかかった。
「…夜光虫?
まるで蛍だね」
振り返る先に佇んでいるのは、財前光彦だった。
「…財前さん…」
「まだ財前さんか。
…そろそろ名前で呼んで欲しいな。瑠璃子ちゃん」
…こんばんは。
微笑みながら瑠璃子の前に立った財前は、高価そうなサマーニットをさらりと着こなした如何にも育ちの良い青年といった姿だった。